めまい

めまいには天井や頭の中がぐるぐる回る回転性めまいや、ふわふわと足が地につかない、または船に乗っているように感じる浮遊性めまい、気の遠くなる感じや後ろに引っ張られる感覚、立ちくらみなど、さまざまなものがあります。
原因として内耳の平衡神経の異常によるもののほか、脳卒中や脳腫瘍など中枢性のもの、心臓疾患にともなうもの、頸椎ヘルニアなど頸性のもの、貧血や血圧の調節障害によるものなど種々のものがあります。


特に中枢性や心臓の病気にともなうめまいは大変危険であり、意識障害や強い頭痛、しびれや麻痺、言語障害や嚥下障害、動悸などをともなう時は迷わず救急受診が必要です。
頸部の強い凝りや上肢のしびれをともなう時には頸性のめまいを疑わなければなりません。
急に立ち上がった時に起りやすかったり、意識が遠のく感覚をともなったり、午前中に起こりやすいなどの場合には起立性調節障害が疑われます。ここでは耳性のめまいについてお話しします。
耳性めまいの代表的な病気には、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、突発性難聴、メニエール病、外リンパ瘻などがあります。


良性発作性頭位めまい症はもっとも多い病気で、内耳の耳石と呼ばれる身体の姿勢や動きを感知するセンサーが、正常の位置から三半規管の中に剥がれ落ちて起こるとされています。
原因は不明ですが、頭を打った後や同じ方向ばかり向いて寝る人、骨粗鬆症や女性ホルモンの低下との関連も考えられています。
夜間トイレに起きる時や朝目覚めて起き上がった時、就寝時に横になった時、寝返りを打った時、洗濯ものを干そうと上を向いた時、髪を洗おうとしたり足元の物を取ろうと下を向いた時などに突然目がぐるぐるまわり、吐き気やおう吐を伴うこともあります。
聴力低下や耳鳴りが同時に起こることはありません。症状は数秒から数十秒程度続き、大抵の場合、ある決まった向きに頭を向けた時に起こりやすく、頭を戻すと収まる傾向があります。


治療として耳石をもとの位置に戻す耳石置換法が行なわれますが、典型的な症例ばかりではなく、すぐに診断がついたり、すべての方にこの方法が行えるわけではありません。
そのような場合は薬物治療が行われます。
前庭神経炎も突然起こる回転性めまいが特徴的ですが、頭位とは関係なくどの方向を向いてもぐるぐる回るめまいが数日間続きます。難聴や耳鳴はありません。
原因は不明ですが、ウイルス感染や血流障害が考えられています。治療は内服や点滴による薬物治療が行われます。


突発性難聴では突然の聴力の低下や耳鳴とともにめまいをともなうことがあります。
めまいの程度は回転性から浮遊性までさまざまで、めまいの方を主訴に来院されて、聴力の低下が見つかることもあります、原因は不明で、ウイルス感染や血流障害が考えられています。
治療は内服や点滴による薬物治療が行われます。


メニエール病はめまいの中でもっともよく知られた病気ですが、実際にはそれほど多くはありません。
症状は人によってさまざまですが、典型的な例では嘔吐をともなう突然の激しい回転性めまいや難聴、耳鳴が同時に起こり、数時間持続した後は何事もなかったかのようにめまいは治まり、難聴や耳鳴も改善しますが、発作を繰り返すうちに徐々に聴力が低下していくことが特徴です。
治療は内服や点滴による薬物治療です。


原因は不明ですが、この病気では内耳に水が溜まって浮腫が起こることが知られており、重症例では内耳の水はけをよくするための手術が行われることもあります。
外リンパ漏は内耳のリンパ液が漏れ出ることによって起こる病気で、回転性のめまいとともに聴力の低下が起こります。


急に重い荷物を持ち上げたり、トイレでいきんだり、くしゃみをしたり、ダイビングや追突事故など急激な内耳圧の変動で内耳に亀裂ができてリンパ液が漏れ出ることによって起こります。
突発性難聴と違って聴力が変動する時はこの病気を疑わなければなりません。
漏れが続くとめまいが続くだけでなく聴力を失うため、安静や薬物治療によって改善が見られない場合には閉鎖手術が行なわれます。


突然、天地が引っくり返るようなめまいが起これば誰でもパニックになってしまいがちですが、耳性のめまいは基本的に命に関わることはありませんので、まずは安静にして、少し落ち着いたところで医療機関を受診するとよいでしょう。
ここに挙げた病気以外にも、加齢にともなうものや色々と検査をしても診断に至らない例も見られます。


また、数日で改善する場合もあればなかなか改善せず長期に通院を続けてもらうことも少なくありません。精神的ストレスや疲れ、睡眠不足などの肉体的ストレスのもとで起こることが多く、心や身体が悲鳴をあげているものと考えて無理をしないことが大切です。
転倒や階段、高所からの転落、運転など十分な注意が必要です。

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